東日本大震災・原発事故に関する申し入れ(第9次)その1

福島県知事 佐藤雄平

東日本大震災原発事故に関する申し入れ(第9次)

2011年3月29日

日本共産党福島県東北関東大震災対策本部

本部長 久保田仁

神山悦子

宮川絵美子

藤川淑子

一、原発事故に関わる問題について
1、原発事故に対する基本的立場について
① 今もなお危険な状態の続いている原発事故について、東京電力頼みではなく、原子力安全委員会をはじめ民間も含めたあらゆる専門家や技術者の知恵と能力を結集して当面の危機を収束させるよう国に求めること。
② 市町村や被災住民への情報伝達を速やかに行うとともに、摂取制限など規制を伴う情報は、補償を含めた対応策を同時に伝え、不安を解消すること。
③ 数々の公式な指摘を東京電力が無視した結果、東京電力でのみ発生している今回の原発事故はまさに「人災」であることを基本的立場とすること。それに伴う被害・損害・出費は、当然すべて補償・賠償され、また当面の生活を保障する責任を有する。
したがって、原発事故がなければ発生し得なかった問題について、その実態に基づき東京電力および国へ補償・賠償を要求すると共に、当面の手当ては県自ら行なうこと。
④ 補償・賠償および生活保障は、原発からの距離によって差別しないように国及び東京電力に求めること。
つまり、避難者「指示に基づく避難」も「自主避難」も差別してはならないし、また、公の避難施設に避難した人のみならず、実態として本来の住居から逃れている人をすべて避難者と捉えて等しく遇されるべきである。同時に、避難していない人も、原発事故によって結果的に生活に困窮している場合が多数あり、この場合も等しく遇されるべきである。
⑤ 県としても、上記の立場で県民を守りぬくこと。そして、JCO臨界事故の時に茨城県が果たしたように、補償・賠償および生活保障のための窓口の役割を果たすこと。
⑥「原子力損害の賠償に関する法律」などに基づいて補償・賠償を行なうことになると思うが、現行法では救済されない県民については、特例措置などで速やかに対応するよう国に求めること。また、それが実施されるまでは、県が援助からもれる県民を生まないよう充分な対応をすること。

2、避難者支援について
<避難所について>
① 多くの避難者は、ガソリンがまったくなくて自宅に戻るにしても移動できずにいる。避難所などで避難者にガソリンを供給できるようにすること。
② 県は一定の避難者を対象に、県内の旅館やホテルを避難先として1泊1人5,000円の費用を7月末まで負担するとしているが、対象者を福島第1原発から半径30km圏内の避難者や県内外の避難所にいる人などに限定するとしてきている。
しかし、3月28日の大門実紀史参院議員の国会予算委員会質問では、災害救助法の弾力運用が厚生労働省から通達されており、県内の被災者すべてが災害救助法に基づく5,000円の援助対象になると厚生労働大臣が答弁している。国の方針通り県内の被災者すべてを対象とし、とりわけ高齢者、重度心身障がい者、乳幼児のいる家族など、避難所での集団生活が困難な災害弱者については一刻も早く対処すること。
③ 老人ホーム入所者など避難所での生活が難しいことから山形県羽黒休暇村など、有償の宿泊所へ施設ごと集団ですでに避難している避難者がいる。国に対し、避難所に認定するとともに、これまでの分も含めて無償とするよう求めること。
④ 民間賃貸住宅の借り上げ、公営住宅の活用、これからできる仮設住宅、それぞれの地域などの選択肢も示して、避難者の意向を十分に汲むこと。
仮設住宅建設、民間住宅借り上げ、雇用促進住宅、民間大企業所有の社宅等の空き家借り上げなど、できるところから早急に入居が進むよう取り組むことを求める。
その際、いわき市薄磯地区などでは共同して入居したいと具体的に要望がある。ほかの地域でも今後の生活再建や復興が進むよう、避難前の集落がコミュニティを壊さずに住めるよう対応をすること。また、新地町などではそれを実践するための綿密な構想を持っている。その時に問題になるのが仮設住宅の絶対数であり、十分な数の仮設住宅を県として保障することを求める。
また国が確保した3万戸の仮設住宅との関係で、仮設住宅業者が資材を出すことを国に止められていて、いま必要なところで仮設住宅設置が進まないとも聞いている。国に改善を求めること。

<医療・福祉について>
① 糖尿病患者が血糖値検査器具をわすれ、県立会津病院にいったら、その場で「実費をいただきます」と言われ、市-内の別の病院にいって器具を手当てしてもらったことがあったという。少なくとも県立病院には、あまりにも非常識な対応をとらないよう徹底することを求める。
② 薬が足りないという要望がある。医師や保健師の常駐・巡回体制を引き続き充実させることを求める。
避難者の透析患者が十分な透析を受けるのが困難になっている。そもそも避難先で指示された病院が遠くてガソリンがなくて通えない、あるいは通えても透析時間が短くなっていることがある。十分な透析ができるように県として支援することを求める。

<避難生活について>
被災世帯への緊急小口資金など、避難者が活用できる諸制度が避難者に十分知らされていない。これらの情報を避難所に徹底するとともに、避難者の生活・労働・住宅などの相談要員を大規模避難所は常駐で、それ以外のところは巡回で配置することを求める。  
また、仮設住宅などへ入居後も孤独死などを生まないためにも、国あるいは県として専門の相談員を配置して巡回させることを求める。
② 避難所によって避難者の2倍の食料がくるところがある一方、足りないところがあるなどムラがある。県と市町村が連携を図り情報を共有しながら、物資を有効に活用できるように求める。また、あたたかい食事を提供できるように手立てを取ること。
会津の㈱大善には県の発注した支援物資が、衣類を中心に40万点あると聞いているが、県対策本部を介して避難所に配送するため、支援物資を持っていったらすでに避難者は移動後だったこともあるという。また物資の中には長袖など、いまの時期に重要な衣類も多いというが、早急に物資を避難者に届けるために、市町村単位で分配することなどで、必要な避難者の元にわたるよう手立てをとるよう求める。
③ 避難生活にあたっては、要介護者や心身障がい者はもちろん、性同一性障害なども含むマイノリティーの方々にも最大限配慮することを求める。
県の避難所一覧にない施設にも避難者がきており、例えばアルツ磐梯では約40人の
避難者がいて、アルツ磐梯の職員がこれまで無償で対応をしているという。また、ある県立高校では、食料が十分届かなかった時に担当していた教員が自腹で食料を調達したという例もある。こういったケースに対する補償を検討すること。
④ 自動車の免許証の再交付にあたっては、無料とすること。窓口で3,000円の費用負担を求められた例が報告されている。
⑤ 避難生活が長引くなかで、避難指示圏内の自宅に一時帰宅したいという要望が強くなっている。一時帰宅を自粛するように求めた枝野官房長官の記者会見では、「さまざまなモニタリングの結果を踏まえて」と話しているが、そもそも20km圏内の放射線量について政府からのアナウンスはない。一時帰宅できない根拠を数値で示すよう国に求めること。

<教育について>
① 各地で避難している子どもたちが避難先で就学するにあたり、どこで今後の生活をするのかの意向調査をしっかり行ったうえで、就学先を決められる丁寧な対応をとること。また自治体単位での避難では、同じ学校の児童・生徒を可能な限りまとめ、担任も継続させるなどの配慮をすること。
② 教科書はもちろん文房具や体操着、絵の具や習字道具などの学用品で不自由しないような対応を求める。
③ 就学援助制度の徹底を図り、避難者の就学援助については基本的に申請があれば認めるよう市町村を指導すること。
④ 学校校舎を始め教育施設の耐震診断を早期に実施し、学校耐震化を急ぐこと。

3、放射能汚染対策について
① 測定する放射性物質の種類を増やすとともに、大気、水、土壌の測定個所を増やすこと。
② ヨウ素剤については、引き続き行政がすぐに住民に配布できるところまで配布準備をすすめておくことを求める。
③ 「水道水の放射線量が高かったことが2日後に発表される。しかも、該当自治体になんの連絡もなし」(川俣町)といったことがあったが、全体として国・県・市町村の間での情報共有・意思疎通が不十分である。こういう中で現場に行くほど情報が乏しく、県民の不安は高まるばかりである。正確な情報を迅速に末端まで届けるよう国と県に求める。
④ 今後一定期間、放射性降下物による汚染が予想される中で、県民の安心のためにも特に、原発30km圏に近い自治体やこの間放射線量の高い自治体を優先的に、全県でサーベイメーターの整備すること。県内の土壌や水、農産物などの放射線量を県内各地分測定できる設備の整備を、国の責任においてすすめることを求めること。
福島第一原発30km県内の避難者からは、「自分の住んでいた場所がどのくらいの放射線量なのか知りたい。どうして避難しなければいけないのか合理性のある説明を直接聞きたい」という要望が寄せられている。こういった要望に応えていくこと。