東京電力に対する原発事故にかかわる緊急申し入れ

2011年4月20日

東京電力株式会社社長 清水正孝様

原発事故にかかわる緊急申し入れ

日本共産党福島県委員会 

委員長 久保田 仁

日本共産党福島県議団  

団長 神山 悦子

副団長 宮川えみ子

幹事長 藤川 淑子

原発の安全性を求める福島県連絡会

代表 早川 篤雄

 私たちは、現在福島原発で起こっている事故の発生と危険性を、かねてより東京電力に直接申し入れて指摘してきました。指摘が現実になった中で、事故の責任を真正面から問いただし得る立場のものとしての県民への責任から、以下のことを求めます。

1.福島原発事故が「人災」であり、事故の責任が東京電力にあることを認めること

東京電力に対しては、2005年5月10日に原発の安全性を求める福島県連絡会(略称:原発県連)が、また2007年7月24日には日本共産党福島県委員会、同県議団、原発県連の3者連名で申し入れをして、地震津波により福島原発の機器冷却系が作動できなくなり苛酷事故に至る危険性を重ねて指摘してきた。残念なことに今回、指摘した通りの事態が発生し、INESレベル7の苛酷事故となって、日本最大の環境汚染をもたらすと同時に数百万人におよぶ人々を苦しめている。

当時、東京電力が指摘を受け入れていれば、防ぐことができた事故であり、東京電力全体が「安全神話」にどっぷり浸かっていた結果発生した「人災」である。また事故発生後も、海水の使用やベントなど、いち早くやるべきことを必要なタイミングで実施しなかったことによって被害がいっそう広がり、二重の意味で「人災」となった。

にもかかわらず、東京電力は4月18日の国会においても、この期におよんで事故の責任すら認めておらず、「自然の脅威」とか「想定外」という県民感情を逆なでする言葉をくり返している。

県民に対して申し訳ないという気持ちが少しでもあるのであれば、今回の事故が「人災」であり、その責任が東京電力にあることを認めることを求める。

2.社長自らが福島県内にいる被害者に直接会って正式に謝罪すること

この間、社長は度々福島県内に来ているにもかかわらず、被害者に直接会って正式に謝罪していない。社長自らができる限り多くの避難者や原発周辺自治体、農家、漁業者、商工関係者、観光業者などの被害者である県民を訪問して謝罪すること。

3.原発事故によって発生した、あらゆる被害・損害について全面補償を明確に約束すること

 原発事故によって苦しめられている県民の要求は、一日も早い原発事故収束と、原発事故によって生じた、あらゆる被害・損害の全面補償を東京電力が明確に約束することである。全面補償とは、原発からの距離や、避難しているか否か、放射線の値などで画一的な「線引き」をせず、原発事故がなかったら起こりえなかった被害・損害について、実態に基づいて補償されることである。

この間、JA福島中央会や全漁連、福島県商工会連合会、浪江町議会などが、全面的な、あるいは全県の補償を求めてきたにもかかわらず、東京電力経営陣は全面補償を口にしていない。補償・賠償の第1義的責任は東京電力にあり、全面補償を約束するべきである。

4.現にいま生じている被害・損害について、ただちに仮払いをすること

 国の指示により、東京電力福島第一原発から30km圏内と新たに設定される計画的避難地域の1世帯につき100万円の「仮払金」を支払うことになったが、対象地域外の県民への仮払いや、農業、漁業、商工業、観光など産業関係への仮払いは含まれなかった。そもそも30kmというのは、賠償との関係ではなんら法的根拠のある「線引き」ではなく、損害の発生は単純な距離で「線引き」されるものではない。

対象地域内の避難している住民の生活が大変なことは当然であるが、被害・損害を受けているのは対象地域外でも、また避難のいかんにかかわらず同様である。30km圏内外を持つ南相馬市では、市民が分断されるようなことも起きている。圏内には県から世帯5万円の義援金分配が行われたが、圏外となる鹿島地域から不公平だとの声が上がったため、市として独自に鹿島地域の世帯に5万円の義援金分配をした。そうしたら今度は圏内の住民から、市として一部地域だけに分配するのは不公平だとの声が上がっている。これが仮払金となれば、いっそう悲惨な分断が福島県民の中に持ち込まれる。実際に行政サイドでは、30km圏外でも同一自治体内には避難を促しており、少なくとも一部が今回の支払い対象に入っている自治体に対しては、自治体全体を対象として1次分仮払いとすべきである。

原発事故により失業して収入を絶たれている県民や、いま仮払いされれば廃業せずにすむ業者もある。仮払いがされなければ、あるいは遅れれば被害額は大きくなる。まして、JA福島中央会などからも仮払いを求める悲鳴的要望が東京電力に為されているにもかかわらず1次分に入れず、あろうことか「公平」のためなどという県民を愚弄する立場をとっている。1次分に加え、現にいま生じている被害・損害について、2次分、3次分として間髪おかず、ただちに仮払いをすることを求める。

5.情報公開を徹底し、全世界の英知を結集して一刻も早く事故の収束を図ること

 多くの県民は東京電力に対して強烈な不信感を持っている。これまで東京電力がデータ偽装などを重ねてきたことを考えれば当然であるが、東京電力の発表が信用できずに、不安を増大させている県民が多いのは事実である。同時にこの不信感は、全世界の英知が活用されていないこととも表裏一体である。元原子力安全委員長や元原子力委員長(代理含む)6人をはじめ、原子力学会長、原子力安全基盤機構理事長、原子力安全委員経験者、そして現職の物理学会長、大学教授など16人が3月30日、「福島原発事故についての緊急建言」を発表した。この中では「わが国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的な取り組みが必須である」ということを最も強調している。裏返して言えば、こういった原発を推進してきた面々からしても英知の結集がされていないことを示している。東京電力は、検出している核種ごとの数値など、あらゆるデータを遅滞なく公表するとともに、全世界の英知を生かし、一日も早く事故を収束させることを求める。

6.福島第一原発および第二原発廃炉を明確にすること

 福島県民が第一も第二も含めて原発の再稼動を許さないことは自明である。福島第一原発および第二原発廃炉を求める。

7.今後長期にわたり、福島県民と原発労働者の健康に責任を持つこと

 多くの県民が放射能汚染の不安と日々対峙させられている。とくに内部被曝による晩発性障害の不安は大きい。東京電力として長期、少なくとも30年間にわたり県民と原発労働者の健康に責任を持つこと。

8.今後に生かすべき技術的問題について

 以下の点について、今後に生かすべき立場から、後日すみやかに文書で回答いただけるよう求める。

(1)これまでの報道では、津波が到達するまでは海水取水ポンプは動いたとされているが、引き潮の際は水を吸い込めたのか。

(2)これまでの回答では「水位下降の際にはポンプの損傷を防ぐため、ポンプの停止操作を行なう」としてきたが、今回はポンプの停止操作を行なったのか。

(3)高潮の際は「6号機の14台全部が20cm水没することが判明したので、20cmのかさ上げ工事をした」と回答していたことに、私たちは小手先の対策ではなく、抜本的対策を求め続けてきたが拒否してきた。今回は全部水没したのか。

(4)高潮の時、第2原発の44台の海水ポンプがチリ級津波では水没することも判明していたので抜本対策を求めたことに対し、「水密性を有する建物内に設置されているので安全性に問題はない」と回答していたが、今回の津波をうけても正常に動いたのかどうか。

(5)第一原発では、外部電源を喪失したとされているが、どの場所のどんなところで喪失したのか。

以 上